東北タツミ現場発AIプロジェクト vol.20: AIが答えられなかったのは、数字に出てこない部分でした。 2026 7/28 スタッフブログ 2026年7月28日 2026年7月28日 こんにちは。広報兼、業務改善担当の酒井です。 前回は、AIを使いこなしている人は「指示」じゃなくて「相談」がうまい人だった、という話を書きました。まとまってから聞くんじゃなくて、まとまっていない段階で話しかけたほうがいい、というやつですね。 あわせて読みたい 東北タツミ現場発AIプロジェクト vol.19: AIを使いこなす人は、「相談」がうまい人だった。 こんにちは。広報兼、業務改善担当の酒井です。 前回は、AIへの頼み方は「優秀な新入社員への頼み方」と同じ、という話を書きました。相手・目的・背景を伝えれば、答え… で、その相談を社内であれこれ重ねているうちに、だんだん見えてきたことがあります。AIがすらすら答えてくれる領域と、どうにも歯切れが悪くなる領域が、はっきり分かれるんですよ。 今回は、その歯切れが悪くなるほうの話です。 目次AIが急に、当たり障りのないことを言い出す 以前この連載で、Claude in Excelに実績データの分析をお願いした話を書きました。あれ自体はすごく良くて、人がやったら半日かかる集計を数分で出してくれる。 あわせて読みたい 東北タツミ現場発AIプロジェクト vol.14 : ExcelにClaudeが入った。「数式わからない問題」が消えた話。 こんにちは。広報兼、業務改善担当の酒井です。 突然ですが、Excelの数式、得意ですか? 僕は正直、苦手です。VLOOKUPって名前は聞いたことあるけど、正直どう使うのか… 面白かったのは、そのあとです。出てきたグラフを見ながら、「この月だけ上がっているけど、なんでだと思う?」と聞いてみたんですね。 返ってきたのは、「季節要因の可能性があります」「前年同月と比較すると」といった、いかにもそれっぽい答えでした。間違ってはいない。けど、ピンとこない。 実際の理由を知っている人に聞いたら、一言でした。 「あー、あのとき〇〇が起きていたからね」 という、現場で起きている事実。……そりゃ、Excelには書いてないですよね。 記録に残っているのは、結果だけ ここで気づいたことがあって。社内に溜まっているデータって、ほとんどが「結果」なんです。 何個売れた、いくらだった、何日かかった。全部、起きたことの記録。でも実際の仕事って、その手前に判断があって、その判断には理由があって、その理由のほとんどはどこにも記録されていないんですよね。 なんでこのお客様には早めに在庫を押さえておいたのか。なんであの案件だけ先に回したのか。なんであのとき、聞かれたものと違うものを勧めたのか。 やった本人の頭の中には、ちゃんと理由があります。でも記録に残るのは「売れた」「間に合った」という結果のほうだけ。そしてAIが読めるのは、その残ったほうだけなんです。 「この問い合わせ、化けるぞ」がわからない もっとわかりやすい例もあります。 うちには毎日いろんな問い合わせが来ます。それをベテランが眺めていて、ときどきこう言うんですよ。「これ、たぶん本気だぞ」。 文面はそっけない。数量も1本だけ。字面だけ見たら、他の問い合わせと何も変わりません。でも実際、そういうのが後になって大きい話になったりする。 なんでわかるんですかと聞いたら、書き方が具体的だとか、型番の指定が妙に細かいとか、断片はぽろぽろ出てくる。でも本人も全部は説明できない。何百件と見てきた蓄積が、そういう形で体に残っているわけです。 これはさすがに、今のAIには渡せません。渡せる形になっていないので。 でも、言葉にできる部分は意外と多い じゃあお手上げかというと、そうでもなくて。 「なんとなく」と言われたあとに、しつこく食い下がってみると、実は半分くらいは言葉になるんです。「型番を正確に書いてくる人は、もう社内で検討が進んでる」とか。本人にとっては当たり前すぎて、わざわざ口に出すことじゃなかっただけで。 これを書き出しておくと、AIにも渡せるようになります。しかも面白いのは、書き出したものがそのまま若手の教材になっていたことでして。今まで「あの人に聞かないとわからない」だったことが、文章として残る。 AIのための準備のつもりが、技術継承の準備になっていました。これは完全に副産物でしたね。 それでも、最後に残るものがある とはいえ、全部が言葉になるわけじゃありません。 現物を手に取ったときの感触とか、電話口の声のトーンとか、長く付き合っているお客様との間にある空気とか。そういうものは、どれだけ丁寧に聞き取っても、文章にした時点でだいぶ抜け落ちます。 そして厄介なことに、仕事の勝負どころって、けっこうこの抜け落ちるほうにあるんですよね。 まとめ:推進担当としての気づき AIを入れてみてはっきりしたのは、「AIにも苦手なことがある」という話じゃなくて、うちの仕事のどこに値打ちがあったのかが見えた、ということでした。 調べればわかること、まとめればいいこと、計算すればいいこと。この辺りはもう、AIに任せていい領域だと思います。そして、そこではもう差がつかなくなる。 だとすると残るのは、数字に出てこないほうです。現場でしか身につかなくて、記録に残っていなくて、本人ですら説明しきれない経験の部分。AIが進めば進むほど、そこの値打ちが上がっていく気がしています。 なので最近は、ベテランの「なんとなく」を聞いて回るのが僕の仕事になりつつあります。半分は言葉にして残す。残りの半分は、まだ本人にしかできないこととして、大事に置いておく。そのくらいの距離感が、今はちょうどいいのかなと思っています。 スタッフブログ AIプロジェクト