土壌の力 〜都会の片隅で見つけた、本当の「育てる」意味〜 2025 7/04 スタッフブログ 2025年7月4日 2025年7月4日 中国工場の営業の朱さんの記事です。 昨年の3月末、私は会社の近くにある農園で、約40平方メートルの小さな区画を借りました。 “農園”とはいえ、そこは元々建設用地だった場所。痩せた土の中には、瓦礫やレンガの破片が深く埋まっており、とても「豊かな畑」とは言えない状態でした。この土地を丸ごと借りて整備し、「小田辺辺(シャオティエンビエンビエン)」という名前を付けたのが、海外留学経験もある元商科の先生・呉(ウー)先生。都会の中にささやかな農的暮らしを取り入れたいと願う「現代の陶淵明」たちが次々に集まり、私もその一人として、この農園の一角を借りることにしました。 目次急ぎ足の種まきと、懸命の手入れ せっかく借りた畑ですから、当然「たくさん収穫したい!」という欲が湧きます。すぐに道具と種を買い揃え、週末には意気揚々と畑へ。時間が惜しくて、1週目でざっと雑草を取り、肥料を撒き、2週目にはもう種をまきました。3週目には小さな芽が土から顔を出し、期待はますます膨らみます。 水やり、害虫取り、追肥、雑草抜き――週末ごとにせっせと畑の世話に通いました。農作業は想像以上に体力も気力も消耗しますが、不思議と心は満たされていくものでした。 苗の成長と、思わぬ「限界」 そして6月。ついに野菜の収穫シーズンが到来。唐辛子、小さなトマト、丸々としたナスやキュウリ……頑張った甲斐あって、実はそこそこつきました。 しかし、喜びと同時に「何かおかしい」と気づきます。実の数は多いのに、苗がひょろひょろと頼りないのです。まるで、痩せた老馬が重すぎる荷物を無理やり背負っているような状態。このままでは長持ちしないだろうなと感じていた矢先、6月末の大雨と風で、一気に苗は倒れ、葉は黄色く変色し、畑はほぼ全滅となりました。 原因は「土」にあった なぜ、こんなことになったのか。反省と検討を重ねた結果、私たちはようやく気づきました。 原因は、「土づくりの甘さ」にあったのです。 雑草を抜いて肥料を撒くだけでは、土壌としては不十分。本来ならば、レンガや瓦礫などの異物を丁寧に取り除き、土の塊を砕き、木灰や有機肥料をしっかり混ぜて、太陽の力で数日間乾燥・消毒する――そうした「土を育てる時間」が必要だったのです。 一から土を耕し直す冬 冬になり、枯れた苗を引き抜いた後、私たちは土地を丁寧に区分けし、以下のステップで1ヶ月半かけて土壌を整えました。 雑草を抜く 深く掘り返す 石や瓦礫を取り除く 土を細かく砕く 肥料と灰を混ぜる 日光にさらして消毒する こうして迎えた今年の春。再び種をまいたところ、苗は驚くほど元気に育ち、虫の被害もほとんどなし。5月末からは、収穫のたびに驚くほど多くの野菜が取れるようになりました。冬瓜やカボチャもすくすくと育ち、何十キロにもなりそうな勢いです。 植物の成長が教えてくれたこと この2シーズンの体験を通して、私は深く感じました。 植物の成長には自然のリズムがあり、「土壌」はその中でも最も大切な要素だということ。ふかふかで栄養たっぷりの土であれば、種は立派な芽を出し、芽は健康な苗になり、苗は豊かな実りをもたらしてくれるのです。 もし焦って、整備の不十分な土地に種をまいてしまえば、その後どれだけ手間をかけても、苗は病弱で、収穫も限られてしまう――これは、子どもの成長にもまったく同じことが言えるのではないでしょうか。 子どもの成長も、サービスも「土壌」が決め手 子育てにおける「土壌」とは、親の愛情や尊重、そして家庭内の雰囲気そのもの。温かく安定した家庭環境の中でこそ、子どもは安心してのびのびと育ち、自然とたくましく、健やかに育つのです。 同様に、顧客サービスにおいても、まず大切なのは「信頼」という名の土壌づくりです。ただ問題を解決するのではなく、「この人の役に立ちたい」という誠意と熱意をもって相手に向き合えば、自然と信頼関係は育まれ、やがて情報もスムーズに共有され、満足のいく成果が生まれていきます。 つまり――どんなに立派な種(計画・サービス)を持っていても、それを育てる土壌が貧しければ、思うような結果は得られない。土を育てることこそが、本当の意味での「育てる」第一歩なのです。 スタッフブログ