1ニュートンってどのくらい? ― 感覚と数値、そして“実用性”の交差点 2025 5/27 スタッフブログ 2025年5月22日 2025年5月27日 こんにちは。営業部の高橋です。日頃、さまざまなパーツを受注する中で、一番悩む部分が「感覚と数値」の問題。ここは経験が非常に必要な部分と言えます。 LED電球のソケットを回すとき、どのくらいの力加減が“ちょうどいい”のでしょうか。あるお客様はこう言いました。「ペットボトルのフタを開けるときの硬さが理想です」。 測定器でその力を数値化してみると、およそ1ニュートン。数字で見るとたいしたことのない力のように感じますが、実際の使い心地はそう単純ではありません。 この“感覚”と“数値”のズレ。そしてそこにもうひとつ加わるべき観点が「実用に耐えうるか」ということ。実際に長期間使っても壊れず、誤操作を防ぎ、なおかつ使いやすいトルクとはどのくらいなのか―。 コネクタ設計において、この「感覚・数値・実用性」の三つをどうバランスさせるかが、製品の価値を大きく左右します。 目次「ニュートン」とはどんな単位か? 「ニュートン(N)」は力の単位であり、1ニュートン=100グラムの物体に働く重力と同じくらいの力です。 例えば、0.5リットルのペットボトルのフタを開けるとき、実際には1~3ニュートンの力が指先にかかっていることがあります。 ただし、これは“垂直方向に加える力”として定義されているため、「回す」「ねじる」動作に変換するには、トルク(回転力)への変換が必要です。ここが感覚とのズレの原因にもなります。 感覚のばらつきと難しさ。そして実用性の観点が必要。 「硬すぎると回らないし、柔らかすぎるとゆるみやすい」。このバランスをどう取るかが設計の核心ですが、人によって「ちょうどいい」と感じる基準は異なります。 手の大きさ 筋力(性別・年齢) 使用シーン(手袋装着、濡れた手など) 一度きりの操作か、何度も回す設計か など、感覚には個人差があるため、「全員にとって使いやすい」力加減は存在しないのです。 ここで大切なのが「実用性の観点」です。つまりLED電球として使う時のことを考える必要があるのです。 使っていて緩まないか 落下衝撃や振動でも外れないか 経年劣化で緩くなりすぎないか 高温・低温下でも変化しないか こうした条件を満たす必要があり、たとえ「ちょうどよく感じる1ニュートン」であっても、耐久試験の結果次第では調整が必要になります。 実際、開発段階では「感覚的にはベストだが、衝撃試験で外れてしまう」という理由で、仕様トルクを1.5ニュートンに変更することもあります。つまり、「ちょうどよい」≠「実用に耐える」という現実があるのです。 設計に必要なのは“数値×感覚×実用性”のトライアングル コネクタやソケットを開発する上では、この三つの観点のちょうどいいバランスを探ることが求められます。 数値で品質を保証しつつ、感覚的に心地よく、実際の使用に耐えるだけの信頼性を持たせる。 たとえば当社では、設計段階で複数のバリエーションを試作し、ユーザーテストと機械試験の両方を実施。かつちょうどいい耐久性の面でも優れていたという結果が出たこともあります。 まとめ:数値は“目安”、感覚は“体験”、そして実用性は“信頼” 数値は、設計者の共通言語です。感覚は、ユーザーの本音です。そして実用性は、製品として世に出るための“条件”です。 この三つの視点を重ね合わせることで、初めて「本当に使いやすい製品」が生まれるのだと、私たちは信じています。 スタッフブログ