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東北タツミ現場発AIプロジェクト vol.21: AIは、「決める」ことだけはできない。

こんにちは。広報兼、業務改善担当の酒井です。

前回は、数字に出てこない経験はまだAIに任せきれない、という話を書きました。AIが進むほど、記録に残らない経験の値打ちが上がっていく、というやつです。

今回はその続きで、じゃあ結局、人に残る仕事の正体って何なんだろう、という話です。先に結論を言うと、「決めること」でした。

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素晴らしい資料ができたが、それでも会議が止まった

少し前に、お客様向けの提案資料をつくったときのことです。新しい取引につながるかもしれない、わりと大事なプレゼンでした。

こういうとき、AIは本当に優秀です。
伝えたい内容を箇条書きで渡すと、構成から言い回し、想定される質問への答えまで、数分で下書きの形にしてくれます。以前なら資料づくりだけで数日かかっていたやつです。

で、できあがった下書きを、社内の打ち合わせで確認していたときのこと。
資料そのものには、誰も文句がないんです。「よくできてるね」で終わるかと思いきや、最後の最後でこうなりました。

「で……この条件、出しちゃっていいの?」

沈黙です。

価格をどこまで見せるか。納期をこの線で約束していいのか。資料はきれいに埋まっているのに、いちばん肝心なところだけが宙に浮いている。このとき気づいたんです。AIが速くしてくれたのは「決める手前」まで。
資料がどれだけ立派になっても、最後のひと押しだけは、テーブルの上にぽんと残っている。

「AIのおすすめ」で決めたことになるのか

いや、AIに聞けば答えてくれますよ。「この条件で出すべきだと思う?」と聞けば、「この内容なら十分に競争力があります。おすすめします」と、ちゃんと推してくれます。

でも、それで決めたことになるかというと、ならないんです。

想像してみてください。おすすめの通りに提案を出して、もし約束した納期が守れなかったとき。「AIが大丈夫って言ったので」——お客様相手に、これは通らないですよね。社内ですら通らないと思います。

つまりAIは、おすすめはくれるけど、責任は引き取ってくれない。

そして「決める」の中身って、実は選ぶことじゃなくて、結果を引き受けると宣言することなんですよね。

「この条件で出す」と口にすることは誰でもできる
。「これで行こう。結果は自分が引き受ける」が言えるかどうかが、決めるということでした。

AIは、決められない言い訳を消していく

ここで、ちょっと耳の痛い話があります。

今までは、決まらない会議には便利な言い訳がありました。
「情報が足りないから、今日は決められない」。
持ち帰って調べて、また来週。これで何となく格好がついていたんです。

AIは、この言い訳を消しました。
情報ならその場で出ます。比較でも試算でも、会議中に「ちょっと聞いてみますね」で数分です。

すると、どうなるか。

決まらない理由が「情報」から「人」に移るんです。
材料が揃っているのに決まらないなら、それは決める覚悟がまだない、ということが見えてしまう。
AIを入れて仕事が速くなるほど、最後に残るボトルネックは「決断」になっていく。

効率化の先で待っていたのが、いちばん人間くさい課題だったというのは、なかなか皮肉な話です。

決めるのがうまい人がやっていたこと

じゃあ、決める力はどう鍛えればいいのか。社内で決めるのがうまい人を観察していて、ひとつ共通点に気づきました。

決めた理由を、言葉にして残しているんです。

「今回はBにする。理由は、今の客層だと○○を先に見せたほうが伝わるから。もし××だったらAに戻す」

こんなふうに、選んだ理由と、引き返す条件までセットで口にする。
これ、前回書いた「暗黙知の言語化」と同じ構図なんですよね。

判断の理由を言葉にする習慣がある人は、決めるのも速い。

そしてここでは、AIがちゃんと役に立ちます。
決める前に「この判断の穴を指摘して」と壁打ちする。

決めたあとに「今の決定と理由を記録用にまとめて」と頼む。決断そのものは渡せないけど、決断の質を上げて、決断を記録に残すことは、AIの得意分野です。

まとめ:推進担当としての気づき

AIを入れて見えてきたのは、仕事の正体は作業じゃなくて決断だった、ということです。

調べる・まとめる・比べるはAIに任せられる。残るのは「それで行こう」と言って、結果を引き受けること。
ここの値打ちは、これからむしろ上がっていくと思います。

なので最近、社内でAIの使い方を聞かれたときは、こう答えるようにしています。
「決める手前までは全部AIに手伝ってもらっていい。そのかわり、最後のひと言だけは自分で言う」。

材料が数分で揃う時代です。
だったら僕たちは、決める練習をしたほうがいい。

小さいことからでいいので、「どっちでもいい」を一日ひとつ減らす。それが、AI時代のいちばん実用的なトレーニングなんじゃないかと思っています。

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